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情に厚いトルコが、サウジアラビアから断交されたカタールを庇い始めた理由【トルコの主張】

2017年7月17日

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情に厚いトルコが、サウジアラビアから断交されたカタールを庇い始めた理由【トルコの主張】

2017年7月17日

日本のことを一番に思ってくれている国はどこか?と聞かれたとき、私はおそらくトルコというかもしれない。もちろん台湾やインドネシアなども親日国だし、東日本大震災のときの義援金の額は、人口が2000万規模なのにも関わらず、台湾が3億人以上のアメリカよりも多かったのは有名な話。

また、インドも親日では?と思う人もいるかもしれないけれども、インドは親日というよりは、日本のことをあまり知らないし、なんといっても人種が多すぎて多様すぎて、一つの国として日本が好きか?と言えばちょっと違う。

「インド人が白人のような顔をしている理由と、インド北東部に日本人のような民族がいる理由」

なので、国として考えると、台湾やインドよりもトルコのほうがものを言う国だということも忘れてはいけない。ということを強調したかった。

とにかくこの国はモノを言う国だ。

イランで日本人が取り残されたとき、救助してくれたのはトルコ人。エルトゥールル号遭難事件で日本人がトルコ人を助けたことでこの友情が芽生えたわけだけれども、映画化し、両国の絆ともいうべき作品となっている。

またあのロシアにだって逆らった国で、むしろロシアと関係を強化したり、またトルコ人が同胞と思っている中国に飲み込まれた新疆ウイグル自治区でも、ウイグル族をイジメている問題にも、トルコはしっかりと抗議し続けている。


「新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)の件で、トルコ人が中国政府にマジギレしている理由」

そんなトルコって、ヨーロッパからはEUの加盟を拒否られ、しかもイスラム国家とはいえ、中東のアラビア語圏とはつながりたくない模様。地理的にとても微妙な位置にあり、EU加盟は拒否されても、日本人が参加を拒否される陰のサミットであるビルダーバーグ会議の開催地には過去3回も選ばれている。

「日本人の参加が拒否された裏のサミット「ビルダーバーグ会議」と、「三極委員会」の違い」

またジョージ・フリッドマン(George Friedman)の「100年予測」では、2050年、日本はトルコと同盟して再びアメリカに戦争を仕掛ける。なんていう大胆な予想もあるくらい。

なによりも、トルコは中東を見下している。(ここを知らない日本人が多い)

その理由は、もともとトルコはオスマン帝国という巨大な帝国を築いていた点と、その勢力が弱まるにつれ、現在の中東がいくつもの国々に分かれていて、聞いたこともないような小国がいくつも、王家が支配するという形で存在しているからだ。

もちろん、これにはイギリスやフランスなどが無理やり中東に国境を引いたことにある。まず、このトルコや、サウジアラビアのある中東エリアの歴史を簡単に紐解いていく。

 

①サウジアラビアと比べられたくないトルコ

サウジアラビアと聞くとオイルマネーのイメージが強く、豪華な王室をイメージしていないだろうか?現在そんなサウジアラビアは、脱オイルを掲げている。また、サウジ・ビジョンという、将来のサウジアラビアは、このように変わっていく。ということを示し、投資家を惹きつけている。

https://vision2030.gov.sa/en

その話に乗った誰もが知っている代表的な人物は、ソフトバンクの会長である孫正義さんだ。(最近私の夢に出てきた…)

さて、そもそもこの中東というエリアには、江戸時代(1603 – 1868)が始まる前くらいまでは、オスマン帝国という国が最盛期を迎えていた。

そのころサウジアラビアなんていう国家すらなかったのだ。ということは日本人はあまり意識したことがないかもしれない。

かつて、イスラム教の聖地ともいわれているメディナやメッカは、オスマン帝国(トルコ)のものであったし、この中東で大きな力を持っていたのはトルコだったということをザックリ知る必要がある。

その後、1744年にアラビア半島の大部分を占める砂漠の地に、突如サウード家が、第一次サウード王国を作った。と言えばわかりやすいだろうか?

上のオスマン帝国の地図を見ても、現在のサウジアラビアは色がついていない。ここは砂漠で何もなく、いろんな部族が共同で住んでいたため、その土地を現在のサウード家が国家宣言したというわけだ。

ちなみにオマーンという国がアラブ首長国連邦(ドバイなど)の真下にあるけれども、ここもオスマン帝国の影響をあまり受けなかった。というのも、当時ポルトガルがオマーンに関わっていたからだ。(そんなオマーンの王室に日本人が入ったという話もあまり知られていないのは残念)

「オマーン国の「タイムール国王」と「大山清子」の間にできた「ブサイナ王女」と、オマーンの歴史」

つまり、歴史的にみてトルコのほうが上。サウジアラビアは下というのが、この中東エリアにおける基本である。

もう一つ付け加えると、トルコはヨーロッパ、サウジアラビアは砂漠のアフリカのようなイメージもある。そんな砂漠にいる多様な部族を一つのサウード家がまとめあげているため、サウジアラビア人には、日本人やトルコ人のように、サウジアラビア人!としての誇りもない。あるのは、それぞれの部族出身の誇りである。(アラブは部族社会が多い)

②現代版のオスマン帝国とも言えるGCCが崩れ去る日

現在、中東のボスと言えば、かつてのようにトルコではなくサウジアラビアである。というのも、この国を中心とした、湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council→GCCと略していうことが多い)という国の集まりがあり、その中心国(ボス)がサウジアラビアだからだ。

これらの国に当てはまるのは、

アラブ首長国連邦
バーレーン
クウェート
オマーン
カタール
サウジアラビア

など湾岸諸国にあるオイル国家である。このGCCに加盟している国々の一人当たりのGDPは日本人とほとんど変わらなく、HDI(人間開発指数)に関しても、数値的には日本よりも少し下だけれども、日本と同じ超高度人間開発国のカテゴリとして扱われている。

「人種、国家間における知能指数「IQ」格差と、「IQ」「EQ」の違い」

つまり、世界レベルでも進んでいるエリアということになっている。その中でも、カタールは桁外れで、日本人の平均二倍以上も一人当たりのGDPが多い国でもあり、GCCの中でもアラブ首長国連邦に次いでHDIが高い国だ。つまり優秀なのである。

そんなサウジとカタールは、簡単にいうとサウジアラビアがお父さんでカタールが息子のような関係を保ってきた。

それは地政学的にみても、カタールという国がサウジアラビアからちょっと突き出た小さい半島しかない小さな国ということからもわかる。

いずれにしても、これらGCCの結束は意外に弱く、それは歴史を見ればわかることで、このエリアにいつ王室が誕生したのか。ということを知るのは一種の参考になると思う。

「アラブ(中東・北アフリカ)に存在する8つの王室と、マリク(国王)、アミール(首長)、大統領、スルタンの違い」

③サウジが一番ウザい相手はイラン

サウジアラビアとトルコの歴史をみると、なんとなくこの二つの上下関係が見えてきたと思う。ところでサウジアラビアは今までトルコのことをほとんど相手にしてこなかった。というのもサウジがオイルマネーによってかなり国として潤っていたからだ。

けれども、このオイルマネーがいつまでも続かない点と、サウジの西側にあるイランの制裁解除(核協議の合意と制裁解除)が行われてから、ヨーロッパ、特にドイツなどからイランへの投資の話などが舞い込んできたという焦りがある。

サウジアラビアにとっては、中東でほぼすべての国が自分の言うことを聞いていたという状況がずっと続いていたので、唯一サウジに対抗していたイラン(7910万人)はずっと敵であった。1979年のイランアメリカ大使館人質事件で、アメリカの面子と名誉を酷く傷つけたイランの存在のお陰で、この軸におけるアメリカの、わかりやすくいうと東アジアにおける日本のような役割を果たしてきたのが、サウジアラビアだからだ。

アメリカと中国はまだ仲が良いのに対して、アメリカとイランはずっと敵対している。その分、アメリカはサウジアラビアを優遇してきた。

ちなみにあの人質事件以前は、アメリカとイランは非常に仲が良かった。それはイラン皇帝がアメリカによって援助されていたことからもわかる。

サウジにとってペルシャという長い歴史と伝統を持ち、そしてサウジアラビア(スンニ派)と違う、シーア派(イラン)最大勢力であるイランが、経済制裁を解除され発展していくのは、絶対に許せないのである。

実際、2016年1月16日、国際原子力機関(IAEA)はイランが核濃縮に必要な遠心分離器などを大幅に削減したことを確認したと発表し、米欧諸国がイランに対する経済制裁を解除する手続きが始まってから数ヶ月後の2016年4月25日に、サウジ・ビジョン 2030 が発表されている。

https://en.wikipedia.org/wiki/Saudi_Vision_2030

このイランに対して、カタールが近づいているということは、結構前から話題になっていたけれども、まだこの時点では問題化していなかった。

 

④サウジがカタールに気に食わないと思っている点

サウジアラビアの息子的存在であり続けていたカタールは、アルジャジーラという英語版の国際放送でサウジの王室を批判したり、またサウジアラビアの許可なしに、カタールで2022 FIFAワールドカップのような世界的なイベントを開こうとしたり、やりたい放題してきた。

特にアルジャジーラは、サウジ王室から圧力をかけられ続けており、サウジ王室がアルジャジーラを廃止にしたいのは、このエリアに住んでいるものなら誰でも知っていることである。

Why does Saudi Arabia want to close al-Jazeera?

アルジャジーラの知名度はかなり高く、世界各国で視聴されているBBCや、CNN、RT(ロシア系メディア)などにも引けを取らないメディアである。

こういうメディアを持っているカタールは小国ながら発信力があるので、かなり強い。

またサウジよりも1人当たりのGDPが高いという点は、ある意味、嫉妬されているのは間違いないだろう。

けれども、問題はそこではない。

カタールに、お父さん的存在であるサウジがついにブチギレした理由は、カタールがサウジアラビアの大っ嫌いなイランに接近している点だ。これに尽きる。

 

⑤イランは非常に可能性に秘めた国

イランという国は日本では危ない国というふうにアメリカからの洗脳を植え付けられているけれども、今まさにイランという国にヨーロッパや中国から投資が集まり、今後この地域でサウジと対等になるくらい、イランが経済成長すると見込まれているようだ。

イラン系のニュース記事によると、2050年には、サウジには及ばないけれども、サウジにかなり近づくほどの経済規模になっていると予測してる。


realiran.org/iran-to-become-17th-largest-economy-by-2050/

イランはエンジニア輩出でも世界トップレベルであり、イランの政情と投資によっては非常に潜在のある国だ。また大学進学率も高い。

The Countries With The Most Engineering Graduates [Infographic]:FORBES

そして、サウジが最も恐れているのサウジとイランの経済規模が同等になり、この軸におけるパワーバンスが変わるだけでなく、サウジアラビアが今までやってきたことがバラされる可能性がある恐れもあるのではないか?と私はみている。

その内容とは、サウジアラビアとアメリカが、イスラム過激派に資金提供、または訓練しているという事実だ。これは、トランプ氏が以前、イスラム国の「創始者」はオバマ政権だ!と発言したことを撤回しないことからも分かる。

https://en.wikipedia.org/wiki/Response_of_Saudi_Arabia_to_ISIL

 

⑥カタールが断交され、トルコが割り込んだ理由

カタールが断交されてから、カタール(お金持ち国家でHDIも高い)からトルコに対する投資が急増したり、トルコがカタールを庇おうとする場面がたびたび報じられるようになった。

実は、トルコとカタールは、あまり目立たたなかっただけで、2016年には、トルコに軍事基地を提供する協定を結んでいた。それから、数カ月の月日を経て、2017年6月5日に、サウジは仲間(アラブ首長国連邦、バーレーン、エジプト、イエメン、モルディブ、モーリタニア)とともにカタールと断交(2017年カタール外交危機)した。


地理的にサウジアラビアの半島とも言えるカタールに、トルコが軍事基地を提供されているという状況。これがサウジを怒らせたのは言うまでもない。

実際に、サウジアラビアがカタールと断交しない条件として以下の三つを挙げた。

①衛星テレビ局アルジャジーラの閉鎖
②カタール国内に存在するトルコ軍基地の停止
③イランとの外交関係の縮小
④過激派組織との関係断絶

私が思うに、カタールは自らサウジを中心としたGCC国々から距離を置いているのではないか?とも思ってしまう。またそれは、パレスチナ問題に直結するとも思う。

そんな孤立状態のカタールを支えているのが、イランとトルコ。である。中東のいくつかある国の中で、唯一国と呼べるのが、エジプト、トルコ、イラン(そのほかの国家は、最近、ヨーロッパによって国境をひかれて誕生したり、内戦や戦争などで国として機能できていない。例えばイラクやシリアなど)と呼ばれているので、このうちの二つからカタールが支持されているわけなのだ。

⑦トルコの番組から見えるカタールに対する考え方

こんな記事を書いていたら、トルコ語のユーチューブ動画(テレビ番組の一部がアップロードされていたもので芸能人をはじめトルコの経済学者らしきものが集まっているような番組)を発見。

ちなみに動画は記事の上のほうに貼ったけれども、かなりセンシティブなものだったためか、動画が削除されてしまっていた(;^_^A→あえて残しておこう。

へぇ~。トルコ美女多いな。と思いながら見ていたんだけどね( ´艸`)→日本のなんだか姉妹系の顔が多かった…。

以下、動画で、語っている内容

カタールはペルシア湾に位置する好条件の立地だ。サウジはそんなカタールを潰そうとしている。

トルコ軍はカタールで何をするべきか?サウジのとった行動のホンネはわからないが、いい意味であれ悪い意味であれ、サウジがカタールを孤立させて、しかもその背後にいるトルコも孤立させようとしているのは事実だろう。

というのも、サウジは以前中東の覇権をアメリカから奪い取ろうとしているロシアをも孤立させようとしたからだ。

我が国トルコのエルドアン大統領はカタールに、困った時の友こそ真の友という意味で、カタールを聖なる友人と呼んだ。

カタールをターゲットとしているということは、トルコをターゲットとしていることでもある。

いいか、これから最大の忠告をする。

2016年トルコクーデター未遂事件のとき、カタールはトルコ側にいた。

しかも、トルコとロシアが緊迫状態にあったとき、カタールは無条件にトルコをサポートしてくれた。

カタールはトルコに対してとても友好的でしかも、ロシアとの緊迫の中でもサポートしてくれたという、とても勇敢な国なのは間違いない。

みんなが知っているとおり、カタールにはトルコ軍の基地がある。あの基地は、将来このペルシア湾沿岸地域にとって、より強力になる可能性を秘めている。

https://www.albawaba.com/business/first-turkish-military-base-qatar-be-ready-2018-823636

つまり、それがサウジのとった行動の最大の理由だと考えているのだ。

最近トルコはカタールと誠実な関係を維持している。知っているとおりカタールはトルコの企業を買収したりもしている。カタール人は食品から建設まで、多くの分野でトルコのビジネスに関与している。つまり、経済においてもトルコとカタールは切っても切り離せない関係になりつつあるのだ。

サウジは躊躇するべきではない。

カタールはサウジの友人だし、アラブの一員だ。しかもイスラム教徒としても同じなのだ。つまりカタール人は聖人。だからサウジはカタールのことをこれ以上、孤立させるべきではない。

なのでトルコはサウジに、カタールとうまくやるように手紙を送るべき。


と、ちょっとラフな翻訳だったけどこんな感じのことを動画で一生懸命語っていた。

 

マルチリンガールのコメント

なんとなく、なぜトルコがカタールとこれだけ親密なのか、おわかりいただだけただろうか?また、今回のサウジアラビアをはじめとするその子分国家たちのカタール断交をきっかけに、トルコ・イラン・カタール・ロシアがもっと近づいている。

そして、アメリカが中東から離れていくと同時に、これらの結束が強くなり、サウジが今までのようにこの中東エリアでボスでいられるということは、今後ない可能性も否定できないと私は見ている。

サウジがカタールがある半島の部分に運河を作り、狐島にしようと本気で企んでいるようだけれども、いずれにしても、これはサウジアラビアのバックにアメリカが今後もつくか、それともロシアがこの中東エリアを軍事力で保護するのか。どっちかによって変わってくるのかもしれない。

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