よく日本人は自分たちはドイツ人と似ていると言う。で、私もそう思っていた。けれども、昔わたしが付き合っていたドイツ人の彼氏にそれを言ったとき、鼻で笑われたのを今でも覚えている。
真面目。器用。この意味でいえば、似ている。かもしれない。けれども、この真面目や器用という言葉も結局、全く同じ意味なのか?と言われれは違うと思うのだ。
戦後、日本とドイツは敗戦国だったにもかかわらず、アメリカに次いでの経済大国を維持したりもしたせいか、勤勉とか真面目とか、器用という意味で、なぜか日本人とドイツは似ている!と信じ込んでいる人が多いのではないだろうか。
この記事では、そんな日本人とドイツ人の類似論を覆すようなことを書いていきたいと思う。ちなみに、以下の記事もよく読まれている。
「なぜドイツ国民の46%は日本にネガティブな感情を抱くのか?ドイツ人は日本が嫌い?【ドイツの反応】」
ではまず、似ていない部分から書いていき、似ている部分を書いていこう。
①率直なドイツ人と、曖昧な日本人

よく日本人とドイツ人と全く対照的なところとして挙がってくるのが、ドイツ人は思ったことを率直に言うのに対して、日本人はその正反対の行動を取ることである。
ドイツ人の率直さは、日本人がイメージする中国人や韓国人の率直さよりも強く、アメリカ人でさえ、ドイツ人はなぜあんなに思ったことをズバズバ言うの?と思うくらいなのだ。
「日本人はどっちに似ている?ドイツ人とアメリカ人の違い TOP20」
嫌だと思ったことは嫌だとハッキリ言うのがドイツ人であり、アメリカ人は嫌でも、少しぼやかすことができる。
またドイツ人は議論好きだということ。(ユダヤ人に非常に似ている)議論して何でも解決しようとする。けれども、日本人の場合、ハーモニー、つまり調和することによって解決しようとする。
※日本人は、ユダヤ人についてももう少し勉強したほうがいいかも
「ノーベル賞の20%、世界の富の分配、産業の独占。日本人はユダヤ人(失われた10支族)説まで、ユダヤに関する知識 TOP10」
まさに縄文人と弥生人が融合して大和民族になったように、調和することを重んじるのが日本人であり、言葉を戦わせて議論することはあまり好まないのだ。
つまりドイツには空気を読むという観念がない。
当然、教育の違いもあるけれども、ドイツ人は日本人より自分の意見を述べることに長けている。これは、クリティカル・シンキング(批判的思考)などを教育で学んでいるからだ。
つまり、ドイツ人が日本語を話せたと仮定して、日本人とドイツ人が議論するような場面があったとすれば、多くの日本人がドイツ人に論破されてしまう可能性があるということだ。
②言語による違いが生み出す思考
上の①に関連してくるのだけれども、日本語とドイツ語はとても離れた言語であると言われている。もちろん、英語やフランス語と同じインド・ヨーロッパ言語に属するドイツ語は、日本語とは全く違う言語なのだけれども、問題はそこではない。言語学を勉強した人ならわかるかもしれないけれども、世界の言語は、二つの文化に分類することができる。
ロー・コンテクスト文化
ハイ・コンテクスト文化
コンテクストとは文脈の意味であり、簡単にいうと、ロー・コンテクスト文化は、少ない文脈でも意味が分かるという意味で、ドイツ語は文法ががっちりしていて言いたことを明確に述べる言語なので、一文をみただけで意味が分かる場合が多いのに対して、日本語の場合は、一文をみただけでも意味が分からないので、前後の文脈をみなければ、正確に分の内容を理解することができない言語と言われている。
英語やドイツ語を学んだことにある日本人ならわかるかもしれないけれども、英語が上手な日本人が日本語で話すときに、外国語が分からない日本人よりも、日本語の語彙数というか、説明するときの単語の量がハンパなく多いのは、このように全く離れた言語を学んでいるからである。
つまり日本語しか知らない日本人からすると、そこまでハッキリ言わなくてもいいと言いたくなるくらい、ドイツ人はドイツ語を使用するときに、事細かに話しているということなのである。
つまり、ドイツ語は取扱説明書などを書くのに非常に向いている言語であるということなのだ。
以下にも詳しく書いた。
「ドイツ語を勉強するメリット、需要、重要性」
③一人当たりのGDPと、労働時間
2018年現在、日本のGDPはまだアメリカ、中国に次いで世界3位ではある。けれどもこれは日本の人口が1億2千万人と、ロシアを除くヨーロッパのどの国よりも人口が多いためである。これを2017年発表の一人当たりのGDPランキングで見ると、
ドイツ→44,470
日本→38,428
韓国→29,743
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_GDP_(nominal)_per_capita
と結構な差がある。もちろん通貨の価値的な意味で、ユーロのほうが高いからドイツのGDPのほうが高く見えるという見方もある。
なので為替変動に左右されない購買力平価でみてみた場合どうだろう。
ドイツ→50,715
日本→43,876
韓国→38,260
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_GDP_(PPP)_per_capita
ふむ。やはりドイツのほうが高い。ドイツ人は平均的に日本人よりも、お金を使っているということになる。
けれども、日本のGDPがドイツのGDPより低いのに、ドイツ人は日本人よりも働いていないのをご存知だろうか。
つまり、日本人の年間労働時間はドイツ人よりも長い。そして参考に、お隣の韓国は日本よりも長い。
韓国人→2224時間
日本→1729時間
ドイツ→1371時間
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Working_time
つまり、日本人よりも、358時間も働いていない。でも同じ給料をもらって、しかもその休暇中にインドや、スペイン、タイなどのビーチで休暇を取っている…。
ちょっとドイツ人!遊びすぎ!!そんな中日本人は一生懸命、働いているのに…。と思ってしまうほど。
でも、これって今の日本でもできることなのだけれども、日本人のお客様は神様とか、家族よりも会社が大事とかいう固定概念があるため、なかなか変わっていかないのが実情。
もう一度言うけれども、
ドイツ人は358時間つまり、1日8時間労働だとすれば、44日間も日本人よりも多く休みをとっていて、日本人と同じ、またはそれ以上の給料を得ているのだ。
上のGDPをみて思うのは、円安でユーロ高だということを考えれば、日本とドイツの一人当たりのGDPは同額ともとれるが、やはりこのようにドイツ人の平均年間労働時間をみることによって、日本とドイツの収入の違いを明確に理解することができるのではないか。とも思うのだ。
ちなみに、おおざっぱな計算だけど、韓国人ってドイツ人の二倍働いているというふうにも見える。
④仕事よりプライベート優先のドイツ人と、仕事優先の日本人
③と関連してくるのだけれど、ドイツ人は家族やプライベートをもっとも優先する。けれども日本人は家族やプライベートを優先したくてもできない社会にいる。ドイツ人は仕事が終わったら帰るのではなく、就業時間が終わったらすぐに家に帰って仕事は明日するというスタイル。
そのためドイツでは休暇シーズンになると、お客がサービスを受けたくても受けられないというようなことが発生してしまう。
つまり、休暇をたくさんとれるという意味ではドイツのスタイルはいいのだけれども、サービスを受ける側は、バケーションシーズンになったときには非常に不便な生活を送ることになる。
例えばパソコンが故障しました。コールセンターに電話したい。けど繋がらない…。なぜ?休暇に出ているからだよ…。みたいな。
一方、以前ほどではないにしても、日本はお客=神様なので、サービスを受ける側からすると過ごしやすい国でもある。
日本は歴史的にも、上下関係がはっきりしていたので、人の下で真面目にコツコツ働くスタイルが向いているのかもしれない。
そういう意味では仕事を優先する日本のスタイルも悪くはないとも思う。仕事優先=家族を守るということにも繋がるからだ。
また、日本人がたくさん働いたから幸福度が低いということには繋がらないという意見もある。けど一つ日本人が勘違いしているのは、長時間働いて自分のプライベートを犠牲にして自分の健康を疎かにするのが真面目で美徳だと思っていることかもしれない。
⑤ルールを守るドイツ人と、みんながやってるからと、合わせる日本人
よく言われるのがドイツはルールに従って行動する。一方、日本人はルールに従っているようで、実はルールを守ろうとしているのではなく、周りと同じようにしなきゃ!という心理で動いている場合が多い。例えば、あの薬よく聞くんだよね~。と聞けば、みんなが良いって言っているのだから、いいんだよね!と、何も調べずに良いものだと決めつけるのが日本人なのである。
一方、ドイツ人の場合は周りが良いと言っていても調べる。
もっとわかりやすく言うと、吸ってはいけないのに路上でタバコを吸う人がいたとしましょう。
ドイツ人なら、ここで吸ってはいけないルールとなっているので違う場所で吸ってください。と言うかもしれないけれど、日本人の場合、誰もここで吸ってませんよ?みたいな感じの言い方になるのだ。
⑥ノーベル賞の受賞者数
どちらの民族も優秀なのか?という意味で考えた場合、あまり参考にはならないかもしれないけれども、ノーベル賞の受賞者数で比較するという手もある。で、両国民をノーベル数でみてみると、
ドイツ→106人
日本→25人
韓国→1人・・
というように、ドイツ人よりも人口の多い日本なのにもかかわらず、日本の受賞者はドイツに比べ少ない。これはドイツが日本よりも先に近代化したとか、という事情もあるにしても、この差はかなり大きい。
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Nobel_laureates_by_country
ドイツはおよそ、日本の4倍。そもそも、日本は明治維新の時にドイツからいろいろ見習ってきたのだから、ドイツは先輩ともいえる。
けれども、ユダヤ人だけで、ノーベル賞の全体の25パーセントとも言われているので、白人が優先されている可能性も否定できない…。
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Jewish_Nobel_laureates
また一つ、付け加えるとすれば、ノーベル賞は、21世紀に入ってから、日本のほうがドイツよりも多い。その研究の多くは、1970年~2000年までに積み上げてきたものだとすると、戦後日本のノーベル賞もドイツのノーベル賞数も変わらないかもしれない。
⑦日本人女性とドイツ人女性は対照的
ドイツ人女性の半分以上は化粧をしないと言われている。一方、日本ではお化粧をしない女性は女じゃないと思われるような社会。https://www.quora.com/Why-are-so-many-German-girls-so-pretty
この違いは何なのか。
日本人女性は、お化粧をして幼く見えるようにして、全体的に男性に養ってもらえるようなファッションを好む一方、ドイツ人女性は独立した女性を意識した感じが多い。
これは社会の違いから発生するものだと思う。
明らかにドイツ人女性のほうが全体的に、スポーティーで男っぽい印象がある。もちろんドイツ人女性は背が高いというのもあるけれども、化粧をしない点や、肌を焼くことを好む点、思ったことをズバズバ言う点、日本人女性ほどスカートを履かない点を考えても、全く対照的とも思える。
またドイツを始め、白人国家では日本人は、アジア人の一員と見なされ見下されることが多い。
「日本人は海外でナメられてる?パリで行われている中国人狩りにみる、白人が思うアジア人のイメージ」
⑧手先の器用さと頭の器用さ
日本人は大量生産時代に経済大国になったことからも分かるように、手先が器用で芸術的なセンスのある人が多いように思う。一方、ドイツ人の場合、クリティカルシンキングが強いということからもわかるように、頭を使って考えることが得意な人が多いのではないかとも思う。ドイツ人は頭が器用。つまり、創造 "creation" に向いている。つまり、その創造性が現在のような残業をしなくても、日本と同じくらい生産性を生み出すことに成功したのではないか。
ドイツは賛否両論があるものの、移民を大量に受け入れている点、また女性の労働参加や、LGBTの権利なども世界の主要国の中でもずば抜けて高い。
けれどもドイツも日本と同じように、もともとは女性の労働参加が突出して多かったわけでもなく、LGBTが受け入れられない普通のキリスト教国であった。
ドイツの場合、日本と違うのは、新しいことを日本よりも先に始めている点だろう。それを数十年後に日本が真似をするというパターンだ。
一方、日本人は、手先が器用なので、職人やプログラミングなど、細かい作業に向いている。
変な言い方をすれば、やれ!って言われたことに向いているとも言える。
なので中国では中国人が仕組みを作り日本人に働かせればいい。というフレーズまで生まれているくらいだ…。
⑨日本人もドイツ人も時間を守る
これは日本人とドイツ人が似ているところとしてよく話題になる部分である。他の国に比べ、日本人とドイツ人だけは時間を守る人が多いと言われている。⑩日本もドイツも国家ブランドランキングでは上位
ドイツと日本は、対照的な国でありながら、世界の模範となっている部分がある。東南アジアは常に日本を見ているし、経済大国の中国も日本とドイツ、アメリカなどを参考にしている部分がある。http://www.futurebrand.com/uploads/CBI-14_15-LR.pdf
以下、FBのコメント
ノーベル賞受賞者のランキングも、2000年以降では日本は米英に続いて3位です。北里柴三郎や高峰譲吉など今なら確実にノーベル賞が取れたはずが、なぜか東洋人が取れなかったときのデータまで引っ張り出してきて、日本はドイツより下だと言われるのもどうかと思います。
噂話、おもしろ話、世間話のたぐいですからあなたの元彼も、こういう風に答えるべきでした。
ですので、他所の国の人に似ていると言われても嬉しくないし、上から目線で言うなって思ってしまいます。
言えば、鼻で笑われますね。仕事柄ドイツ人技術者と話す機会がありますが、話し合いなりません。日本人の美徳は相手をたてること。さりげない思いやりで接します。ドイツ人の横柄さには辟易します。ただ、ドイツのボヘミアン地方の方は、暖かみのある接し方をしますね。
全日空のパイロットになった友人からの葉書では、ドイツ人から、また一緒に世界制服しよう、とか言われるなどすごく友好的でよかった、とありましたが。
ほんの一例ですが、私が実感したドイツ人感です。
日本の技術で成り立って来た、ヨーロッパ仕様の無煙・無臭ディーゼルエンジンが、日本で売ってはいけなくて、逆に、貨物車のディーゼルの排気ガス規制も遅らせたのは、とても、不幸なことです。アンモニア・フィルタも、開発済みですから、技術的障壁は見えません
トータルで見ると、ドイツは多いですけど、それはノーベル賞ができた頃のドイツと日本の科学技術の圧倒的差だと思います。
21世紀に受賞した研究は、70~90年代頃の結果だと思いますが、その頃は、日本がドイツより多くの科学の結果を出していたと言えると思います。
日本よりそうしたことに対するケアは万全だと思いますが、無理はしていないのでしょうか?
Shintaroさん
日本では、納得して、行動しない、「何となく」から、1歩前進、俺は、子供の時から、じぶんが、納得して、行動、分からないと、分かるまで、質問する、そうすると、理屈ばかりで、言うな、との事多い、今でも、納得しないと、行動しない、ために、グループ作業、より、単独作業が、好きである。
Nanaさん
生産性というのがよくいわれるけど、本当は「消費性」の問題なのでは?例えば小売店の店員だと、自分が店に出ている時間に時間やお金の都合でお客様が買い物に来れない。これでどうやって生産性上げろと?
あかねさん
付き合ってるほとんどの会社は、部門間の横串が無いに等しいので、お役所か?と感じるところが多い
教会税を拒否する人も結構いて、ドイツ人おもしろいな~(笑)
言語的にヨーロッパでも特殊な地域だからかなぁと感じました。
日本もある意味、言語的に孤立してるし、そういうとこからくる共通点なのかなぁと感じました。
今のやり方を外国人と同じようにすれば、日本製品は外国の製品と優位差がなくなるかもしれません。ただし、無駄を省くことは進めないと生産性は落ちますね。的確に判断しないといけない部分です。
「あなたは、韓国系?東南アジア系?祖先(ハプログループ)を知るための遺伝子検査「ジーンライフ」製品の詳細を調べてみた」
3 コメント
わたしの旦那様もドイツ人で、似てるんだか、似てないんだか?って思っていましたが、なんだかすっきり!
またブログ読ませていただきたいと思います。
とすると、日本とドイツでは著しく事情が違う様にも感じますね。
実際どうなんでしょう。
まさに、自分がいかに"ロボットである事に関しては自負がある"かについて思いを巡らせていた所です。
そしてクリエイティブさの無さについて…「クリエイティブ」に対し無用に高いハードルがあるんですね。自分のアレンジした物、考えついた物をなかなか好きになれません。どこかよその物差しを引っ張り出して「でも1mmズレた」などと逐一やっているからです。結局モノマネにしかなれない。
日本の教育システムというか簡単に言うと「教育上最も重視するもの」を見ても、手先の器用さはもはや賜物と言えるでしょう。