アラビア語(セム系言語)

過酷な砂漠を生き抜く「アラブの格言」から見る、日本とは全く違う世界観

2019年10月20日

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過酷な砂漠を生き抜く「アラブの格言」から見る、日本とは全く違う世界観

2019年10月20日




アラビア語の勉強を始めた2015年。私は新しい世界への扉を開く思いで興奮しながらアラビア語を勉強していた。文字も違えば、日本人が大好きなキリスト教圏の言葉でもない。

意外に日本人が憧れる言語のほとんどがキリスト教圏の言語である…('ω')ノ

またアラビア語は発音もかっこいい。という感じでアラビア語ほど興奮を覚えた言語はない。

「アラビア語を勉強するメリット、需要、重要性」

アラビア語を勉強する過程でなぜISIS(いわゆるイスラム国)などが組織されてしまったり、アメリカとの関係、このエリアにおける歴史を調べたりしたものの、なんだかパッとしないのは、現地の人々たちがどのような考えを持っているか知らないことにあった。

分かるだろうか。中国人を知りたければ、孔子の教えでもある論語を読んだりすればいいわけだし、西洋人の考えを知りたければ、聖書を読めばいい。

ましてや大富豪を生み出す宗教、民族でもあるユダヤ人を知りたければタルムードを読めばいいのである。

「大富豪を生み出す、ユダヤの教典「タルムード」とは?」

アラブ人の考えを知りたければ、クルアーン(コーラン)を読めばいいだろうか。確かにそうとも言える。けれどもポイントなのはイスラム教はそれほど古くからあった宗教ではないという点。本来アラブにいた野蛮な部族を統一するために、商人であったムハンマドが作った宗教なのである。

現在のサウジアラビアのメッカやメディナを中心にムハンマドによって広げられたイスラム教は、当時野蛮と言われていた砂漠の部族たちを啓蒙するとともに一つにしていくのだけれども、今もやはり中東の多くの国では、国家や宗教よりも自分はどの部族出身なのか。ということを重視する部族社会なわけだ。

彼らは彼らの祖先が持っている習慣や教えなども持っており、そういった考えがイスラム教の名の下に、間違った行動として現れることもあるのかもしれない。

ちなみにシリア、レバノン、現在のサウジアラビア、エジプト、モロッコなど現在はどれもアラビア語を話す国だけれども、モロッコ方言というように、アラビア語がラテン語だとすれば、ポルトガル語、スペイン語、フランス語、イタリア語のように分かれている。

つまり現在のアラビア語圏も、方言別に分けると、イスラム教が統一される前はどのように分かれていたのかが分かりやすいかもね。

さて、そういったイスラム教以前の教え、砂漠という日本と全く違う環境で生み出される格言を通して、よりアラブや、アラビア語について知ってもらえたらと思う('ω')ノ

①神について

①あなたが必要としている限り、キリスト教徒に親切にしなさい。しかしそうでなければ、やつらの頭の上に壁を引き倒せ(レバノン)
②馬に乗ると神のことを忘れ、馬を降りると馬のことを忘れる(アラブ)
③神は物事を逆にとる(レバノン)
④神はお前に一つ物を与えて、もう一つのものを取り上げる(アラブ)
⑤もし罪を犯したら隠せ(アラブ)
⑥風はいつも悪い方向から吹いてくる(サウジアラビア)
⑦歯のない男のために神様が豆をくださったのだ(アラブ)
⑧もっとも聖なる地に最高に薄汚い連中が住む(レバノン)
⑨追うものと追われるものは、共に神の名を口にする(トルコ)
⑩犬は必ず死ぬ前にモスクの壁でウンコする(トルコ)
⑪私は3つのものをみたことがない。蟻の目、蛇の足、ムラーの親切。

レバノンというのは、もともとフィニキアがあった場所。現在のアラビア語のもとになっているフェニキア語などもこの辺から来ている。なのでレバノンやシリア、ヨルダンのアラビア語は標準アラビア語に近いと言われている。

さて、①のように宗教上、イスラム教徒にはできないけれどもキリスト教徒にはできることもある。その場合、うまくキリスト教徒を雇用し儲けることができる。そういう意味での「必要」なのかもしれない。

⑨などは、ブッシュとサダム・フセインが対立していた時、どちらとも「神」を口にした。イスラム圏でも皆神を口にするが、アメリカもまたキリスト教徒の国なので、何か重大なことがあると、誰もが「神」を口にするのである。

 

②貧富

①あなたのパートナーはあなたの敵対者だ(エジプト)
②生活とは借りて返すことだ(レバノン)
③よく働けば、人は長寿で1日が短い(トルコ)
④一生懸命働くことは、聖戦を戦うことと同じだ(アラブ)
⑤金より土地がいい(オマーン)
⑥ケチな金持ちは果実のつかない木のようなものだ(アラブ)
⑦金がありすぎると人は盲目になる(アラブ)
⑧太陽は貧乏人の外套(アラブ)
⑨金持ちが恵む前に貧乏人は死ぬ(トルコ)
⑩貧困は賢い人の足かせ(シリア)
⑪貧乏は叡智(アラブ)
⑫誰もがベッドで毛布を自分のほうに引っ張る(レバノン)
⑬旅行を通してのみ人は成熟する(ペルシャ)
⑭家から離れているほうが、好きなだけ嘘をつける(アラブ)
⑮冬の焚火の傍は、チューリップのベッド(トルコ)
⑯運の悪い女は1年に二回出産する(アフガニスタン)

敵対者。これは親しき中にも礼儀ありに似たようなものだろうが、少し違うのだろう。仲が良ければなんでも話していいというわけではない部分では一致しそうだ。

また、私がここで一番好きなのが⑧である。確かに冬の寒い日、太陽が洋服のように包んでくれる気がする。

 

③智慧・健康

①柔軟に曲がるものは折れない(南レバノン)
②本当のことを言うやつは首を切られる(アラブ)
③妬みはどう下ろしていいかわからない重荷だ(中世アラブ)
④もし2人がうまくやっているように見えるなら、1人が絶えているのだ(チュニジア)
⑤たくさん持ちすぎていることは、足りないのと同じだ(アラブ)
⑥水を節約するようにと言われた途端、誰もが水を飲み始める(アラブ)
⑦美しいものには傷がある(チュニジア)
⑧健康な人にとっては毎日が結婚式(トルコ)
⑨寒さと貧困があらゆる病気を引き起こす(アラブ)
⑩寒さ・飢え、恐怖があると眠れない(シリア)
⑪運命は医者をバカにする(アラブ)

①は、どこの国でも通用しそう。柔軟であるというのはどこへ行ってもうまく適用してやっていけるという意味である。②は表現こそ残酷だが、簡単に人を信じて何でもかんでも言うな。という意味だろう。

 

④人徳

①正義はよいものだ。しかし誰も家庭ではそれを望まない(マルタ)
②幸福は一場の夢、悲しみは一年続く(アラブ)
③他人を信じるな、自分も信じるな(アラブ)
④一粒の豆でも贈り物は歓迎(ムーア)
⑤もしも神様があなたに何かをくれたら、受けとることだ(アラブ)
⑥あなたに何かくれる男がいたら、そいつはすでにお前から何かを取っているのだ(マルタ)
⑦お前が望んでいることを隠せ、そうすれば成功する(モロッコ)
⑧3つのものは隠せない。恋、妊娠、ラクダ乗り(アラブ)
⑨同じ店をから買うな、同じ道を歩くな(マルタ)
⑩敵には一度、ともには何度でも注意しろ(パレスチナ)
⑪お辞儀をしたら首は切られない(トルコ)
⑫隣人に弱みを打ち明ければ、斧でばっさりやられる(アラブ)
⑬俺の話を聞け、しかし信じるな(アラブ)
⑭心にとっての最上の薬は、沈黙(アラブ)
⑮寛大なすべての欠点を隠す(アラブ)
もしもあなたがたくさん持っていたら富を与えなさい。あまり持っていなかったら心を与えなさい(アラブ)
⑯高貴になる人は肉体労働も平気だ(シリア)
⑰もしも見ているだけで技量が身につくなら、どの犬も肉屋になれる(トルコ)
⑱世界は最後まで耐えている人の側につく(アラブ)
⑲「俺のパンはお前のより大きい」と言われたら、少しくれ。と言えば良い(レバノン)
⑳禿げた女性は自分のいとこの髪の毛を自慢する(レバノン)

⑤や⑲からも分かるようにアラブでは受け取ることが当たり前とされている。富むものはそうではないものに与える。そして受け取る側も当然という気持ちで受け取る。

⑪は日本と同じ。謙虚な人はどこでもやっていけるのだろう。また沈黙。言葉を交わさないほうが分かり合えることってあるよね。

また⑰これは英語を聞いていても話せるようにはならないよ。という意味として現代でも通じるかも。

 

⑤結婚や、女について

①花嫁が欲しければ、金を使わねばならない(アラブ)
②王様、馬、女を信用するな(ペルシャ)
③女たちはいつも知性を家に置いてきている(クルド)
④ベールが厚いほど、上げる価値はない。
⑤もしもあなたの婚約者の容貌を知りたければ、彼女の男兄弟の顔を見たらいい(アラブ)
⑥どの結婚式でも何かがうまくいかない(アラブ)
⑦バカは妻を賛美し賢い男は犬を褒める(トルコ)
⑧愛してくれた男と結婚する女は、愛した男と結婚する女よりうまくいく(アラブ)
⑨小柄な女性は常に夫から若く見られる(アラブ)
⑩後悔した売春婦が奥さまになる(アラブ)
⑪女の蝋燭立てが金で鋳造されているとしても、蝋燭を補充するのは男の役目なのだ(トルコ)
⑫クリスチャンは配偶者の首を絞めるほか、結婚から逃れる方法がない(レバノン)
⑬私は妻に「おまえなんか離婚だ」と言った。すると彼女は「ベッドへおいで」と命じた(イラク)
⑭女はベールと墓以外何も持っていない(サウジアラビア)

サウジアラビアでは女性の人権がない。という言葉に対してサウジの男性は女性を守っているというが、イスラム教といってもそれぞれのエリアによって考え方が違う。

でこのような格言を見ていて分かったのは、やはりイスラム教ということではなく、アラブでもともと根付いている考えとして、女性はバカにされている部分があるということだ。

イスラムでは天国は母の足の下にある。と教えるが、アラブの格言を見ていると、女性を見下したり、危ない存在と見なしている男性目線のものが多い。

また⑧については私自身もよく思うことである。これは砂漠の教えではなく、万国共通ではないだろうか。

 

⑥運命・死

①人間を信頼するのは、水を漉し器に入れるようなものだ(アラブ)
②神が貧しい人を幸福にしようと思ったら、彼のロバを行方不明にして、それからまた見つけだすようにしてやればいいのだ(トルコ)
③犬を洗え、もっと汚くなるだろう(レバノン)
④知的なろうあ者は、口のきける無学な者よりましだ(レバノン)
⑤山にいるヤギのほうが町にいる哲学者よりいい(レバノン)
⑥なつめやしを尊敬しなさい。お前のおばさんだから(アラブ)
⑦最悪の人間は、1人で食べ、助けを断り、奴隷をぶつ奴だ(アラブ)
⑧人にではなく犬に親切にしろ(レバノン)
⑨星に見られるのは、人間の目に見られるよりいい(アラブ)
⑩真実を語るなら、我々のそばにテントを張るな(チュニジア)
⑪小さな小屋に1人で住むほうが、他の人々と宮殿に住むよりいい(マルタ)
⑫二人の目の前で髭を切ってはいけない。一人は短いと言い、もう一人は長いというから(レバノン)
⑬嘘は翼(アフガニスタン)
⑭きちんとした嘘のほうが、水っぽい真実よりましだ(レバノン)
⑮死んだ人を見ると生きていることがありがたい(チュニジア)
⑯愛とともに差し出された玉ねぎは、ヒツジと同価値(エジプト)
⑰この世には気違いのほうがまともなやつより数が多いものだ(マルタ)

真実を言うといつそれが噂になって自分に不利になるか分からない。これはアラブだけでなく日本でもそうだ。だから人はなるべく本当のことを言わないようにする。そのほうが楽に生きれるからだ。⑧は面白い。このような日本人に理解しがたい格言は、本に解説が書かれていて、一冊読むだけでもアラブが丸ごと分かる気さえしてくる。

 

⑦友情

①人は見かけでは半分しか分からない。会話ですべてがわかる(マルタ)
②友人からもらったものは石もりんご(アラブ)
③気持ちは一緒に、住処である点とは離して(アラブ
④足を踏んづける奴がいたら、首根っこを踏んづけてやれ(レバノン)
⑤誰かがおまえに好意を持ってくれたなら、彼が黒人でも好意を返してやれ。誰かがお前を押したなら、たとえ谷底に面した危険な場所でも押し返してやれ。彼かがお前を侮辱したなら、ムハンマドの直系の子孫であろうと侮辱してやれ(アラブ)
⑥客は見ないふりをして出されたものを食べ、噂話をしてはいけない(アラブ)
⑦歓迎されない客人は、大英帝国のようにいつまでも居座る(イラク)
⑧一回あなたを騙した男は、百回騙す(アラブ)
⑨人は病人の見舞いになら一マイルを歩き、争いの修復のためなら二マイルを歩き、友達に会うためなら三マイルを歩く(アラブ)

やったらやり返せ系のものがアラブの格言には多い。アラブ人は情に厚い一方、裏切った場合、ぼこぼこにされることもある。という感じだろうか。

最後に

このように、たくさんの格言を抜粋したが、実際に以下の本には、この何倍もの格言が収録されている。私は本を読みながらその近くに自分の考えを書いたりメモもするので、アラビア語を勉強している人や、もっとこの中東の人たちを理解して関わってみたい人は、是非この本を手に取ってみて欲しい。

アラブの格言 (新潮新書)

ネットで見るのと実際の本を持つのでは全然違うからね。('ω')ノ

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