ヒンディー語(インド周辺の言語)

2050年には1億人増も、ヒンディー語がインドで軽視されている理由

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2050年には1億人増も、ヒンディー語がインドで軽視されている理由

インドと言えば2023年に中国の人口を超え、つまり世界で一番人口の多い国になる。これからヒンディー語学習ブームが来るのではないか?と睨んでいる私は最近ヒンディー語の調査に乗り出している(笑)。

とはいってもまず最初に言えるのは現在の中国語のようなブームは起きないだろう。

実際日本でもヒンディー語学習が以前より叫ばれそうな気もしてくるが、なぜか日本の外国語学習者界隈でもヒンディー語はいまいち人気がないというか、パッとしない。

かといって全く今よりも学習者が増えないというわけではないので、十分ポテンシャルのある言語でもある。

※その将来のポテンシャルを十分見極めるためにこの記事を書いている。

さて、この記事ではインドにおけるヒンディー語が軽視されている理由、今後のヒンディー語人口はどうなるのか?など絡めて書いていきたいと思う。

 

①「ヒンディー語」は、格下の言語!

ヒンディー語を格下の言語。と思っているインド人は多い。それはやはり英語が正しく話せるほど教育水準が高くみられ、収入も高いと思われるからである。

ヒンディー語しか話せない人は、社会的に不利であり、これはロシア語圏におけるキルギスでロシア語が話せなくキルギス語しか話せないとか、フィリピンにおけるタガログ語しか分からない。といったことと非常によく似ている。

 

②多くのインド人は英語が話せない

インド=英語のイメージが強い人もいるかもしれないが、インドには優秀な人も多くいる一方、それ以上に教育を受けていない人口のほうが圧倒的に多く、タクシーの運転手や格安ホテルなどでは英語が通じにくいことも多い。

特にどの組織にも上下関係がはっきりしていて、ホテルのボーイ(荷物部屋まで手伝ってくれたりルームサービスで料理を持ってくる人)などは、正しく英語が話せない人も多く、わざわざ一旦上司に電話するみたいなやりとりも多かった。

また英語が話せる人でも、こちらのほうが英語が上手だとわかると下手(したて)に出るのもインド人の特徴。

 

③実はアラビア語学習者が多い

2011年の国勢調査によると、インドには1.7億人のイスラム教徒が住んでいる。でも彼らがアラビア語を話すわけではない。それぞれの土地の言語、ヒンディー語だったり、パンジャーブ語などを話している。

とはいってもコーランはアラビア語で書かれているので、イスラム教徒であればちょっとした表現は理解している。特にヒンディー語にはペルシア語とアラビア語の語彙が多く流入していて、それは南部のドラヴィダ系の言語よりも明らかだということはよくインドのネット上では話題になる。

また、上記の数字は2011年のものなので、現在この数字はさらに伸びていて、2.5億人くらいいてもおかしくないのでは?と私は考えている。

それはいいとして、中東に住む出稼ぎ労働者の多くがインド人である。

彼らは英語ができれば出稼ぎにいけるが、受け入れ先によっては簡単なアラビア語だけは学習してこいよ。という感じで、インドでは短期間のアラビア語スクール(出稼ぎ労働者向け)が盛んになっている。

つまり、彼らはアラビア語を習得することでアラブ諸国への出稼ぎが実現できるので、賃金がぐんと高くなるためインドではアラビア語学習の熱が意外と高かったりする。

「アラビア語を勉強するメリット、需要、重要性」

 

④ヒンディー語がインドで権威を持った瞬間は一度もない

ここは物凄くポイントなるところ。インド人が英語に対するコンプレックス(劣等感)を強く感じる一方で、ヒンディー語に対しては愛着があまり持てない理由は、そもそもヒンディー語自体がインドという巨大な土地全体で公用語になったような瞬間が歴史上なかったからだとも言われている。

軽く歴史を振り返ってみるとこんな感じだ。

ムガル帝国(1526年ー1858年)=ペルシア語、ウルドゥー語、アラビア語

イギリス領インド帝国(1858年ー1947年)=ウルドゥー語、英語

※ムガル帝国以前はインドにはいろんな国があり、今のように統一した形になったのはムガル帝国の頃である。→デリー・スルターン朝を参照

この中でウルドゥー語というのは現在のパキスタンの公用語であるが、ヒンディー語とほとんど方言のようなものでお互いに通じるレベルの言語。またインド北部にはヒンディー語に似たような言語も多くあり、以下のランキングからもわかるように、インドにはヒンディー語意外にも数千万人が話すような言語がいくつもある。

「インド国内におけるネイティブ言語 TOP30」

ちなみにロシアではロシア語を話す平民と、フランス語を話す貴族。というように、ムガル帝国でもペルシア語を話す貴族とウルドゥー語を話す平民、宗教語や表記語としてのアラビア語のように分かれていたのかもしれない。

※トリビア=ちなみにムガル帝国はペルシア語でモンゴルを意味する「ムグール」からきている。

 

⑤英語話者の中でもレベルがある

上にも書いた通り、インドでは英語が堪能な人は教育水準の高い証拠。事実上イギリスの植民地になって以来インドには様々な西洋的なものが持ち込まれた。地位のある人たちは英語を話し、教育水準が低い人はヒンディー語を話す。こういう構図ができてしまっている。

インド社会では色々な地方の人たちと関わるため、ビジネスにおいてはやはり中立的な英語が好まれる。その理由はやはり南北において人種がそもそも違うので、そういう意味での対立、多様な宗教による対立、など色々あり、英語というインドと本来全く関係ない言語だけれども西洋から持ち込まれて使われてきた言語を使うのが手っ取り早いというところにある。

とはいってもほとんどのインド人の英語はインド英語であり、つまり世界に出るとインド訛りである。

ここ最近は、インドでアメリカンアクセントを持っている人ほど羨ましがられる傾向がある。その理由はアメリカンアクセントが手に入るとアメリカ向けのコールセンターなどに働くことができるので、収入も安定しやすいからだ。

様々なアンケートで、アメリカ人がインド人とのビジネスにおけるやり取りでインド人が話している英語がわかりづらく支障があるということが判明。英語が流暢に話せても世界ではインド訛りと言われてしまうインド英語をわざわざアメリカンアクセントに矯正するプログラムが収入の高い人の間で人気となっている。

とはいってもインド人に対してはインド訛りで話し、海外の人たちに対してはアメリカンアクセントで話すというふうに区別している。

インド人はインド英語を「インドの言語」というふうに認識しているため、わざわざアメリカンアクセントでインド人同士で話すのはおかしいでしょう?という、お高く止まってるの?という感じになるからである。

 

⑥中国の普通語(北京官話)と違うところ

中国では見事に普通語が浸透していった。数十年前は上海に行けばどこでも普通語を話しなさい。の看板がかかげられ、テレビの字幕は全て普通語といった徹底ぶり。中国はもともと話し言葉は少々違えど、どのエリアも漢字を見せれば通じるほど似ている言語である。つまり言語系統が同じなのに対して、インドには3つ以上の言語系統がある。

※上の本棚の写真は、インド北部ダラムサラにいたときに撮影したもの。インドではインド・ヨーロッパ系の言語であるヒンディー語、ドラヴィダ系のタミル語、上の本棚にあるチベット語を含む中国語と同じシナ・チベット語族、ベトナム語などのオーストロアジア語族など、実に多言語大国。

特に南部ドラヴィダ系の言語話者、例えばタミル語はテルグ語話者は、全く言語系統の違い北部のヒンディー語に対して強い嫌悪感を持っている人も多い。

 

⑦サンスクリット公用語論

そこででてくるのがサンスクリット公用語論である。以前ある動画でみたコメントでは、今まで国際会議において英語で発言していたインドの首相だったが、今回初めて国際会議の場でヒンディー語で話した際に、賞賛の声もあった一方、南部から反発のコメントも。

いっそのことサンスクリット語を公用語にしたら誰も文句を言わないのでは?というコメントにかなりの注目が集まっていて、いかに南北インド人の対立というか、言語的に言えばインドは全く統一していないのかがわかる感じであった。

ちなみにインド南部のドラヴィダ系の言語と、サンスクリット語は言語系統的には全く別物ではあるものの、サンスクリット語由来の単語も多く入っていて、北インドのヒンディー語にペルシア語やアラビア語の単語がどっと入ってきてサンスクリット語由来の言語が減ったのに対し、却ってドラヴィダ系の言語にはヒンディー語よりもサンスクリット語由来の言葉が残っていると主張する人もいる。

https://www.quora.com/Is-the-Tamil-language-similar-to-Sanskrit

 

⑧それでも伸びるヒンディー語人口

それでもインドの人口は多いし、この国が成熟していく中でヒンディー語を理解できる人の人口はますます増えていくと予想される。

およそ3.4億人の現在(2021年時点)に対して、2050年は、4.2億人、つまり1億人程度増えると予想されている。=2050年の日本の人口が丸ごと増える感覚。

https://preply.com/en/blog/most-important-languages/

つまり、今現在よりもヒンディー語は軽視されない社会になる可能性は十分にあり、私の予想ではアラビア語由来の単語などを徐々にサンスクリット語由来の言葉に置き換えて行くのでは?と感じている。実際にヒンディー語を勉強していても、単語を学習する際に実際にはアラビア語やペルシア語語源の単語が使われている単語でも、サンスクリット語由来の言葉も同じ辞書に格納されていて、これは面白いと感じている。

 

⑨ドラヴィダ語族が話せると有利?

インド南部のタミル語やテルグ語などはその言語自体に強い誇りを持っている人たちが非常に多い事が特徴。彼らの中にはヒンディー語が話せない人も多く、先に英語を強化してそれこそヒンディー語を軽視している人が多いエリア。

あえてヒンディー語ではなく、こちらの言語を習得する事で、英語+タミル語などのように、多くの人がインドといえば学ぼうとするヒンディー語とは違うことをするのもいいのでは?と私は思っている。→現在タミル語も学習中(笑)。

 

⑩結論

長々と書いたが、ヒンディー語人口は確実に伸びる。けれども、インドは地域によって非常に多くの言語があり、中国と違い民族や言語系統が異なる。その中でヒンディー語だけがインドを代表する言語を確立するのは難しいと思われる。

ヒンディー語圏でのビジネスや生活を求めるのならヒンディー語。インド全体と関わりたいのなら、基本200フレーズくらいのヒンディー語+しっかりとした英語の知識。

インドの特定のエリア、例えばタミル語などによく行く人であれば、しっかりとした英語のレベル+基本200フレーズほどのタミル語。というようにしていけば良いと思う。

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