スペインの黒歴史「アンダルス」はタブーなのか?スペイン語「4000語」がアラビア語由来である理由






世の中には、歴史書などではあまり強調されない黒歴史というものが存在する。日本にももちろんあるし、そういうのはあまり強調されないものだ。

「日本史ではフォーカスされない、タブーな日本の黒歴史、奇習 TOP17」

それはもちろんスペインにもあり、スペイン語を勉強している人、または始めようとしている人、もしくはアラビア語などを勉強している人は、この事実を知ることで、よりそれらの言語を学ぶモチベーションになることは間違いないだろう。

つまりタイトルにある通り、高級単語を中心にスペイン語の4000単語はアラビア語由来であるということ。

以前公開した twitter の6言語スピーチ公開でもわかるのだけど、私はスペイン語とアラビア語どちらも学習していて思ったことは、スペイン語の単語が高級になるにつれ、つまり上級単語になるにつれ見たこともないようなスペルが多くなるのである。

※以下が、アラビア語→韓国語→英語→スペイン語→中国語→フランス語でスピーチした動画。

https://twitter.com/_multilingirl_/status/1220993113398894592

さて、このようになぜスペイン語にはアラビア語の語彙が多く含まれているのかということを歴史的な部分から解説したり、今に至るスペイン人のヨーロッパ人に対するコンプレックスに繋げて書いていきたいと思う。

この記事を読むことで、歴史、言語、人種の複雑さなどが分かってもらえれば幸いだ。





①スペイン語圏には混血が多い理由

まず、スペイン語と言えば、最近アメリカやヨーロッパでも、英語に次ぐ重要な第二外国語としての位置づけが確立されてきている。

※依然としてフランス語も強い。それでも欧米のそれぞれの国々で、スペイン語が外国語としてダントツで人気という場合が多くなってきている。

「日本語は何位?アメリカ、フランス、ドイツ、ロシア、インドにおける人気外国語 TOP5」

そんな中、スペイン語圏の国々を見ていると、ラテンアメリカなど一見、外見だけではどこの国か分からない系の人たちが多い。

私は昔、アメリカにいるヒスパニック系(米国に住むメキシコ人など)と、イランやイラクなどの中東系が見分けられなかった。

その理由は簡単に行けば、スペインなど、中東とDNAが近い人たちが、中南米を植民地化した際に、中南米の先住民と子供を作り、ミックスが沢山生まれたこと、その中には当然、奴隷貿易によって連れてこられた黒人もいる。

アメリカよりも中南米のほうがミックス率が多く(いい意味で融合された)、どこの国か分からない系の顔立ちの人が多いのだ。ということは以下の記事でも書いた。

ラテンアメリカ人と中東人の顔立ちが似ている理由

で、そもそもなぜスペイン人がアラブ人たちと似ているのか?ということを軽く解説していこう。


②スペインではタブーとなっている「アンダルス」



EUの一員でありイスラム教と対峙するキリスト教国でもあるスペインには、あまり知られたくない時代がある。それが「アンダルス」といって、スペイン南部(南部と言っても地図で見て分かる通り大きい)がイスラム圏になった時代だ。

モスクワを中心とするロシアが、数百年もモンゴル帝国の傀儡国家だった時期がるように、こういう歴史は言語の語彙にも表れる。

「ロシアの黒歴史「ジョチ・ウルス」と、モンゴルのロシア支配でアジア人男子がモテると思う理由」

さて、スペインの南側はモロッコ(北アフリカ)だ。この北アフリカというのは、他のアフリカと違い、サハラ砂漠でほかのアフリカとは隔離されていので、黒人のような人種ではなく、中東と同じアラブ人のような人たちが住んでいる。

アラブ社会では、これら北アフリカの国々(モロッコ、チュニジア、アルジェリア、リビア)をマグリブ(アラビア語で陽の沈む場所)と呼び、もちろんアラビア語圏である。

スペイン南部(ポルトガルも含めたイベリア半島南部)もこうしたマグリブと同じように、711年~1492年までイスラムの統治下にあった時代があった。

そのエリアがアンダルスと呼ばれており、ヨーロッパ内でも「スペイン人は白人じゃない」とか「スペイン人は顔が濃い」など、色んな言い方がされるのはそれが理由だと言われている。

スペイン人はヨーロッパでいわゆる見下しの対象になることを非常に嫌がっており、彼らにアラブだった時代に触れるのは一種のタブーかもしれない。

「白人とアラブ人(ベルベル人)のハーフなのですか?に怒りの声も。スペイン人が認めたがらない理由」



③イスラム教徒は、アンダルスを誇りに思っている

イスラム教徒からすれば、EUの一員であり世界に多大な影響を与えたスペインがイスラムの統治下にあったことを大変誇りに思っている。

※イスラム教徒にとっては、エリザベス女王2世の祖先にまつわる噂も、大変誇りになっているということもお忘れずに…。

「エリザベス女王が、天皇よりも世界的に有名な理由と、ムハンマドの子孫説の真実【海外の反応】」

そしてアラブ人から言わせれば、スペインがイスラムに統治されていた時代(8世紀~15世紀はイスラム科学の全盛期)は、アラブ世界は進んでいたので、アラブから多くのものをスペインに与えてやった。という感じ。

地図を見ても分かるようにポルトガルの下半分も、アンダルスであった。なので、今も都市名として、「アルガルヴェ地方」もそのままアラビア語である。

この意味は、al gharb(الغرب) といってアラビア語初級者でも理解できる「西」という意味である。



④スペイン語に存在するアラビア語の代表例

さて、スペインはイスラムの支配下にあったので、それは言語にも出ていてたくさんのアラビア語がスペイン語に混ざっている。これはスペイン語のレベルがある程度上がった人しか気づかない部分だ。

以下、英語版でしか出されていないが、リストである。

Arabic language influence on the Spanish language

そもそもスペイン人やスペイン語圏の中には、これらの高級単語がアラビア語由来だと知らない人も多い。特に中南米の人たちは、スペインの植民地になり現在スペイン語を話すわけだけれども、そんな支配したスペイン人も、その前の時代にはイスラムに支配されていたのだからまた皮肉。

で、スペン語の中で、アラビア語由来だと分かる単語は、まさに「AL」から始まるものである。この「AL」というのはアラビア語で、「the」の意味である。

スペイン語にあるアラビア語由来の4000語のうち、8割(3000単語)がアラビア語と全く形が同じであり、その他にも2割(1000単語)が同じルーツから派生した単語と言われている。

スペイン語アラビア語英語
Azúcarスッカルsugar
Aduanaディワンcustoms
Alcoholアルカハルalcohol
Almohádaアルムッハイpillow
Aceiteジートoil

ほんの一部だけれども、スペイン語とアラビア語のほうが、ALやAを除けばほとんどの子音が一致する。またこの表を見れば、英語のほうがスペイン語よりも遠い言語のように思えてくる。

こういうスペイン語とアラビア語単語の類似性はYouTube動画でも議論されていた。

Similarities Between Spanish And Arabic

日本統治下に入った韓国の漢字語に日本から輸入した単語が多い。ということに似ているので、そういうように考えれば分かり易いかも。

タバコ、キャンディ、マスカラ、アドべ、アルカリ、アベラージ、シロップ、マガジン、ギター、ラケット、ソーダ、タリフ(関税)、ゼロ、コットン、コルク

などもアラビア語由来と言われている。以下にまとめた。

「アラビア語を勉強するメリット、需要、重要性」

つまり言語を知ることで歴史を意識するようにもなるので、一石二鳥だね。



⑤イベリア半島の言語純化運動

一方、同じイベリア半島にあるポルトガル。アンダルス時代、ポルトガル語にもアラビア語がたくさん取り入れられたが、ポルトガル語では、それらの語彙を徐々に消していった。

スペインの場合、アンダルスが終わってからも、まだスペイン国内に沢山のイスラム教徒がいたため、それらの言語純化運動を試したものの、消しきれなく、今に至っていると言われている。

以下を見ても分かるように、同じようにアンダルスだったポルトガル語にはアラビア語由来の単語が非常に少なくなっている。

List of Portuguese words of Arabic origin

それは、スペインとは違い、ポルトガルがイベリア半島の言語純化運動に成功したからである。




⑥アラビア語を学ぶメリット

つまり、スペイン語をかなり高いレベルまで極めるとアラビア語を学習するときに単語レベルでは、少し楽かもしれない。

けど、アラビア語を極めたほうが、スペイン語はもっと簡単になる。その理由は、英語とスペイン語はかなり似ている単語が多く、英語がある程度分かればスペイン語は容易なので、それ+アラビア語をやっておけば、スペイン語は非常に簡単な言語に思えるようになるからだ。(読む分において)

これはアラビア語学習5年くらいになる私が今感じているところ。特にスペイン語の語彙の吸収はめちゃくちゃ簡単に感じている。

「スペイン語を勉強するメリット、需要、重要性」

更にアラビア語の単語を理解していると、

・インドネシア語・マレー語
・ヒンディー語
・スワヒリ語
・トルコ語
・ペルシア語

などにあるおよそ30%くらいの語彙は理解できるようにあると感じている。以下、世界の言語圏を比較したことがあるが、アラビア語はイスラム教国の共通語でもあり、インドネシアやマレーシアではアラビア語は使用されていないけれども、少し話せるだけで尊敬の目で見られるので、お勧め。

「日本語圏 / 英語圏 / 中国語圏 / フランス語圏 / スペイン語圏 / アラビア語圏 / ロシア語圏 の比較」


⑦最後に

海外を拠点に外国語を教えるようになって2年くらいが経つ今、やはりこうやって多言語をやっていて歴史が分かって楽しいと感じている。

言語を勉強することは歴史に興味を持つこと、人種問わず多くの人たちに興味を持つことであり、こういった好奇心が、人間を成長させるのではないだろうか。

そういう意味でも、英語以外の言語を学ぶことをお勧めする。アラビア語でもいいし、他に学ばれないようなマイナーな言語でもいいので。

「フリーになって分かった、英語よりも自分の好きなマイナー言語を学ぶべき理由」

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